「業績が悪化していて、希望退職を募っている。ただ、会社としては自己都合で辞めてほしいと言われている…」
「上司から執拗に退職を勧められている。会社都合のはずなのに、なぜか自己都合の退職届にサインを求められている…」
あなたも今、そんな理不尽な状況に置かれていませんか?
会社のために真面目に働いてきたにもかかわらず、いざという時に「会社の都合」を「自己都合」にすり替えられ、泣き寝入りを迫られる。そんな悔しい思いをしている人は、決して少なくありません。
しかし、なぜ会社はあれほどまでに「会社都合退職」を嫌がり、「自己都合」で処理しようと画策するのでしょうか?
その答えは、非常にシンプルです。会社にとって、金銭的・経営的に計り知れないデメリットがあるからです。
この記事では、普段は決して表に出てこない会社の「本音」と「裏事情」を徹底的に暴露します。
- 会社が会社都合退職を死ぬほど嫌がる、生々しい4つの金銭的デメリット
- 人事が使う、巧妙な「自己都合」誘導トーク術とその手口
- 誘導トークを切り返すための、具体的な反論例と対処法
この記事を読めば、あなたはもう会社の言いなりになる必要はありません。相手の手の内を知り、交渉を有利に進めるための「武器」を手に入れることができます。不利な条件での退職を回避し、あなたの正当な権利と未来を守り抜きましょう。
【本音】会社が会社都合退職を死ぬほど嫌がる4つの金銭的デメリット
会社が「自己都合にしてくれ」と懇願してくる最大の理由は、突き詰めれば「お金」です。社員一人が会社都合で辞めることで、会社はあなたが想像する以上に大きな金銭的ダメージを負う可能性があります。その具体的な4つのデメリットを見ていきましょう。
最大の理由!数百万円単位の「雇用助成金」がもらえなくなる
会社経営において、国から支給される「助成金」は非常に重要な収入源です。特に、社員の雇用維持やスキルアップを支援する「雇用調整助成金」や「キャリアアップ助成金」などは、多くの企業が活用しています。
しかし、これらの助成金の多くは、「一定期間内に会社都合の離職者を出していないこと」を支給の絶対条件としています。
例えば、非正規雇用の労働者を正社員化した場合に支給される「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」では、中小企業の場合、1人あたり57万円もの大金が支給されます。しかし、申請前後の一定期間に会社都合の離職者が一人でも出てしまうと、この権利が水の泡と消えるのです。
厚生労働省のデータによると、多くの助成金で「前年度の会社都合離職率が6%以上」といった基準が設けられており、これを超えると申請資格すら失います。社員数50人の会社であれば、たった3人が会社都合で辞めるだけで、翌年度の助成金計画がすべてパーになる計算です。
数百万円、場合によっては数千万円単位の助成金がもらえなくなる。これこそが、会社があなたに「自己都合で辞めてくれ」と頭を下げてくる最大の理由なのです。
解雇予告手当や退職金の割増など、直接的なコストが増加する
次に、社員に直接支払うコストの増加です。
まず、会社が社員を解雇する場合、原則として30日以上前に予告する義務があります。もし即日解雇など、30日に満たない予告期間で解雇を通告する場合は、不足日数分の「解雇予告手当」を支払わなければなりません。これは平均賃金の30日分以上に相当し、会社にとっては想定外の支出となります。
さらに、「退職金」の規定がある会社では、自己都合退職よりも会社都合退職の方が割増で支払われるケースが一般的です。厚生労働省の調査によると、大学卒・勤続20年のモデル退職金では、自己都合が約761万円であるのに対し、会社都合では約1,021万円と、260万円もの差がつくデータもあります。
助成金という「入るはずだったお金」を失うだけでなく、解雇予告手当や退職金という「直接出ていくお金」も増える。このダブルパンチが、経営者を苦しめるのです。
労働紛争に発展した場合の「弁護士費用」と「解決金」
もし、あなたが会社の退職勧奨を不当だと感じ、争う姿勢を見せた場合、会社は「労働紛争」という新たなリスクを抱えることになります。
労働審判や訴訟に発展すれば、当然ながら弁護士を雇う必要があります。その費用は数十万~百万円以上かかることも珍しくありません。
さらに、もし裁判で「違法な退職勧奨」があったと認定されれば、会社はあなたに対して「解決金」や「慰謝料」を支払うよう命じられます。過去の裁判例では、執拗な退職勧奨に対して数十万~百万円単位の慰謝料支払いが命じられたケースも多数存在します。
会社からすれば、紛争が長引けば長引くほど、弁護士費用はかさみ、最終的に支払う解決金も高くなる可能性がある。だからこそ、紛争に発展する前に、なんとか「自己都合」という形で穏便に済ませたいのです。
(補足)企業イメージの悪化による採用コストの増大
直接的なお金の話ではありませんが、無視できないのが「企業イメージの悪化」です。
現代では、転職口コミサイトやSNSで、元社員が会社の内部事情を赤裸々に語ることは珍しくありません。「あの会社は平気でリストラをする」「追い出し部屋がある」といった評判が広まれば、企業の採用活動に大きな支障をきたします。
優秀な人材が集まらなくなり、結果として採用コストは増大。長期的に見れば、経営に深刻なダメージを与えることになります。これもまた、会社が会社都合退職を隠したい理由の一つなのです。
【手口を暴露】巧妙な「自己都合」誘導トーク術とその反論例
会社のデメリットを理解したところで、次に彼らが使う具体的な「手口」を見ていきましょう。人事や上司は、あなたを自己都合退職に追い込むため、実に巧妙なトーク術を駆使してきます。しかし、その手口を知っていれば、冷静に対処することが可能です。
「君のためを思って…」恩情に訴えかける感情論トーク
最も古典的で、しかし効果的なのがこの手口です。
トーク例:
「会社都合で辞めると、君の経歴に傷がつく。次の転職で不利にならないように、円満に自己都合という形にしておいた方が、君のためなんだよ。」
「我々としても、今まで頑張ってくれた君を、こんな形で送り出したくはない。綺麗な形で、円満に次に進んでほしいんだ。」
一見、あなたの将来を案じているかのような優しい言葉。しかし、その裏には「会社のデメリットを回避したい」という明確な意図が隠されています。
反論例:
「お気遣いいただき、ありがとうございます。しかし、私としては事実に基づいて、正当な手続きで処理していただくことを望んでいます。生活もかかっておりますので、失業保険の給付などで不利にならないよう、会社都合での手続きをお願いいたします。」
ポイントは、相手の「気遣い」に感謝を示しつつも、要求はきっぱりと伝えること。 感情論に流されず、「事実」と「正当な手続き」を軸に話を進めましょう。
「このままだと懲戒解雇に…」と不安を煽る脅し文句
情に訴える手口が通用しないと見るや、次に彼らが使うのが「脅し」です。
トーク例:
「最近、君の業績はあまり良くないな。このままでは、能力不足を理由に『懲戒解告』になる可能性もある。そうなる前に、自分から辞めた方がいいんじゃないか?」
「会社都合」よりもさらに重い「懲戒解雇」という選択肢をチラつかせ、あなたを精神的に追い込み、「自己都合の方がマシだ」と思わせる卑劣な手口です。
反論例:
「私が懲戒解雇に該当するほどの、具体的な就業規則違反や業務命令違反があったのでしょうか?もしございましたら、その具体的な事実と、就業規則のどの条項に抵触するのかをご教示いただけますでしょうか。」
ポイントは、具体的な「根拠」を求めること。 懲戒解雇は、社員に重大な規律違反があった場合にのみ適用できる、極めて重い処分です。単なる能力不足で適用できるものではありません。根拠を問いただせば、相手はそれ以上強く出られないはずです。
「退職金は満額出すから」と嘘のメリットを提示する取引トーク
次によく使われるのが、一見有利に見える条件を提示してくる「取引」です。
トーク例:
「わかった。それなら、自己都合という形にしてくれるなら、退職金は会社都合の場合と同じ満額を支払おう。それで手を打たないか?」
退職金が満額もらえるなら…と、つい心が揺らいでしまうかもしれません。しかし、これは巧妙な罠です。
反論例:
「ご配慮いただきありがとうございます。しかし、退職金を満額いただけたとしても、失業保険の給付開始が2ヶ月以上遅れ、給付日数も短くなります。また、国民健康保険料の減免も受けられなくなります。総合的に考えると、私にとっては大きな不利益となりますので、やはり会社都合での手続きをお願いいたします。」
ポイントは、目先の退職金だけでなく、社会保険などを含めた「トータルでの損得」を主張すること。 自己都合にすることで失う失業保険や健康保険のメリットは、退職金の割増分をはるかに上回るケースがほとんどです。
「サインしないと離職票を出さない」と手続きを人質に取る強硬手段
交渉が難航し、相手がしびれを切らした場合、このような違法な手段に出てくることもあります。
トーク例:
「この自己都合の退職届にサインしないと、会社としては離職票を発行できない。手続きが進まないけど、本当にいいのか?」
退職後の手続きに必要な書類を人質に取り、サインを強要する悪質な手口です。
反論例:
「離職票の交付は、労働者が求めた場合に会社が発行する法律上の義務だと認識しております。退職届へのサインを強要されることは、法的に問題があるのではないでしょうか。本日中にご対応いただけない場合、労働基準監督署に相談させていただきます。」
ポイントは、「法律上の義務」であることを明確に伝え、然るべき機関に相談する意思を示すこと。 離職票の不交付は明確な法律違反です。この言葉を出されて、なお強硬な態度を続ける会社はまずありません。
第3章:会社と戦うな!自分の権利を守るための冷静な対処法
会社の巧妙な手口を知ると、怒りや不信感で「戦ってやる!」と感情的になってしまうかもしれません。しかし、大切なのは感情的に反発することではありません。冷静に、客観的な事実を積み重ね、自分の権利を守るための行動を着実に実行することです。
まずは「言った言わない」を防ぐ証拠を確保する
後々の交渉や、万が一の紛争に備えて、最も重要になるのが「客観的な証拠」です。上司や人事との面談では、必ず以下の準備をしておきましょう。
- 会話の録音: スマートフォンのボイスレコーダーアプリで十分です。相手の許可なく録音したデータも、民事訴訟では有効な証拠として認められるケースがほとんどです。「退職を強要された」「自己都合にするよう誘導された」といった発言は、決定的な証拠になります。
- メールやチャット履歴の保存: 退職勧奨に関するやり取りは、すべてスクリーンショットやPDFで保存しておきましょう。
- 関連書類の確保: 雇用契約書、就業規則、業務指示書、給与明細など、自身の労働条件や会社の指示がわかるものは、すべてコピーを取っておきましょう。
「訴えるつもりはない」と思っていても、証拠があるという事実は、あなたを精神的に支え、交渉を有利に進めるための強力なカードになります。
困った時の相談先リストと使い分け
一人で抱え込み、判断に迷ったときは、ためらわずに専門家に相談しましょう。相談先は、状況に応じて使い分けるのが賢明です。
相談窓口 | 役割 | 費用 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|
労働基準監督署 | 法律違反の調査・是正指導 | 無料 | 無料で、会社に直接指導してくれる可能性がある | 会社への「指導」が主で、個人の代理人にはなってくれない |
ハローワーク | 離職理由の判定、失業保険の手続き | 無料 | 離職票の記載内容について、会社と意見が違う場合に相談できる | 労働問題全般の解決ではなく、あくまで失業保険の手続きが中心 |
弁護士 | 交渉・労働審判・訴訟の代理 | 有料 | あなたの代理人として、会社と直接交渉してくれる。法的な強制力を持つ | 費用がかかる(相談料30分5千円~、着手金数十万円~) |
まずは無料で相談できる公的機関(労基署など)に相談し、そこで解決しない場合や、法的な措置を本格的に考える場合に弁護士に相談する、という流れが一般的です。重要なのは、決して一人で悩まないことです。
まとめ:会社の「本音」と「手口」を知り、賢く自分の未来を守ろう
今回は、会社がなぜあれほど会社都合退職を嫌がるのか、その裏にある金銭的なデメリットと、あなたを自己都合退職に追い込むための巧妙な手口を解説しました。
【会社のデメリット】
- 数百万円の助成金がもらえなくなる
- 解雇予告手当や退職金のコストが増える
- 紛争時の弁護士費用や解決金がかかる
- 企業イメージが悪化し、採用コストが増える
【誘導の手口と対処法】
会社側の事情を知り、彼らの手口を理解すれば、もう不当な要求に屈する必要はありません。
大切なのは、感情的にならず、「証拠」を手に、「法律」を盾に、冷静に対処することです。そして、一人で抱え込まず、必ず専門家に相談してください。
あなたのこれからの人生を左右する、非常に重要な局面です。この記事で得た知識を武器に、あなたの正当な権利を主張し、賢く、そして力強く、あなたの未来を守り抜いてください。
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